アルビス株式会社

食彩情報

食彩王国Ⅱ

武士のカレイ。

待ちに待った、底引網漁の解禁。

金沢港
箱ごとに仕分けされた魚が、整然と並ぶ。品定めをする人や収穫を喜ぶ人たちの会話が、あちこちで飛び交う。底引網漁が解禁になった9月1日、初物の競りを待つ金沢港の光景です。漁業関係者には待ちに待った日とあって、陽が暮れた午後7時過ぎにもかかわらず、港は活気づいていました。アンコウ、アマダイ、ノドグロなど、底引網漁でとれる魚は多彩ですが、今回のお目当ては、金沢の人びとが好む「カレイ」。この日は、マガレイ、アカガレイ、アワテガレイなどがとれたようです。肉厚で、透明感のある魚体は、おいしさの証。煮付けや揚げ物など、いろんな料理が楽しめそうですね。そう思いながら魚を眺めていると場内アナウンスが流れて、初日の競りが始まりました。

プロ中のプロが集まる金沢港の競り。

金沢港の競り
金沢港の競りは、独特です。競り人が値段を提示して、買いつけに来た人たちが手をあげて応じていくのですが、手をあげる人がいなければ徐々に値段を下げていく「下げ競り」なのです。一般的には、買う人たちが徐々に値段を上げていく「上げ競り」がよく知られていますが、それとはちょっと趣が異なっていました。港でお目にかかった仲買を営む会社の社長さんのお話によると、「上げ競りは値を上げていくだけなので誰でも買えるが、下げ競りはそうはいかない。魚の目利きをして、提示される値段に瞬時に反応できないと、いい魚を買えない」とのこと。競りは箱ごとに行われて、早いものはわずか数秒で競り落とされていきました。

加賀百万石の華やかな食膳を飾った魚。

カレイ
ところで、金沢の人びとがカレイを好むのはなぜか。とくに「口細」と呼ばれるマガレイを、切り身にせず一匹まるごと調理したものを好むそうですが、そのルーツを探っていたら面白い事実に辿り着きました。映画「武士の献立」の主人公としても知られる加賀藩前田家の料理人「舟木伝内(ふなきでんない)」です。伝内は著書「料理無言抄」の中で、この口細のことを「風味優れて上品」と評価して、さまざまな調理法について書いていたのですね。また、武士にとって身を切るという行為は御法度。それゆえに、一匹まるごと調理したものが好まれるようになったのではないでしょうか。あくまでも想像ですけどね。加賀百万石の華やかな食膳を飾った「カレイ」、皆さんの食卓でも味わってみませんか。アルビス各店にて、金沢港から直送でお届けしています。