アルビス株式会社

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に関する開示

はじめに

当社は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づき、気候変動が当社事業に与える潜在的な影響の評価について開示いたします。当社は、今後もTCFD提言に沿った情報開示を進めてまいります。

ガバナンス

当社は、気候変動の重要性を認識しております。TCFD提言に沿ったガバナンス体制の早期確立に向けて検討・構築中ですが、現状、気候変動の課題は経営戦略推進部が経営会議を通じて経営陣に報告を行っており、その中でも重要な方針や事項については、取締役会への報告・審議を実施し、監督を受けております。

戦略

TCFD提言に沿って当社事業とバリューチェーン全体にわたる潜在的な気候変動のリスク・機会を評価しております。

  • 気候変動リスクと機会の特定:
    当社のバリューチェーンに及ぼす影響について定性的なシナリオ分析を実施しました。評価対象のリスク・機会の抽出方法については、「リスク管理」の項目をご参照下さい。
  • 定性的シナリオ分析:
    IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)等の国際機関が設定した温暖化のシナリオに基づき、抽出された合計16の物理的リスク(5つの大項目)および移行リスク・機会(5つの大項目)を対象に、2030年および2050年での当社事業への影響を定性的に評価しました。

1.シナリオ分析の結果

(1)物理的リスク

当社の事業が日本国内に集中していることから、当社の物理的リスクの評価は国内のみを対象としております。
IPCCによって提供されているシナリオから「気温が2℃上昇するシナリオ」および「気温が4℃上昇するシナリオ」の2つを用い、2030年および2050年時点の影響について評価を行いました。

リスク評価
非常に高い
不確実
リスク リスク区分 物理的リスクおよび
当社事業への潜在的影響
4℃シナリオ 2℃シナリオ
2030 2050 2030 2050
熱波 急性 熱波とそれに伴う冷房/冷却需要の増加により、冷房/冷却コストの増加、停電等により、休業等の発生 非常に
高い
豪雨 急性 豪雨とそれに伴う浸水、土砂崩れの発生により、サプライチェーン/流通経路の分断、休業等の発生
河川氾濫 急性 河川氾濫により店舗の設備等が損傷し、休業等の発生
台風 急性 強力な台風の発生により、商品の調達に支障や遅延が生じたり、店舗が被害を受ける事で、休業等の発生 不確実 不確実
豪雪 急性 豪雪により、商品の調達に支障や遅延が生じたり、店舗が被害を受ける事で、休業等の発生

(2)移行リスクと機会

移行リスクと機会に関しては、世界の動向と日本固有の動きの両面を考慮し、IEAが提供している「1.5℃シナリオ」および「各国表明済みの具体的政策を反映し、現行の取り組みから大きな変化がないSTEPS(2.8℃)シナリオ」を用いてそれぞれのシナリオ評価を行いました。

リスク評価 機会評価
非常に高い 非常に高い
不確実
移行リスク/機会 リスク・機会の分類
(TCFD区分)
移行リスク/機会および
当社事業への潜在的影響
2.8℃
(STEPS)
1.5℃
2030 2050 2030 2050
包装技術への投資 エネルギー源 環境負荷のより低い包装技術、消費者志向、政策の急速な普及
省エネ技術への投資 エネルギー源 エネルギー効率の高い技術の急速な普及は、エネルギー関連コストとGHG排出量低減の機会を創出
エネルギー関連法制 政策・法規制 エネルギー関連法制の急速な強化による、省エネ関連の課税とその対応によるコスト増加 不確実 不確実
炭素価格
関連法制
政策・法規制 炭素価格の上昇と対象範囲の拡大によるコスト増加 非常に
高い
非常に
高い
GHG報告
関連法制
政策・法規制 GHG報告関連法制の強化による、対応コスト増加 不確実 不確実

2.分析の前提条件

TCFD提言に基づき、当社はシナリオ分析に当たって以下の前提条件を用いました。

(1)シナリオ:

物理的リスクを評価する為のシナリオと、移行リスク・機会を評価する為のシナリオをそれぞれ2つ設定し、評価しました。

物理的リスク

IPCCによって提供されているSSP(共通社会経済経路)およびRCP(代表的濃縮経路)を組み合わせた以下2つのシナリオです。

RCP 8.5(4℃シナリオ)

物理的な気候変動の観点から最も「極端な」シナリオであり、気候変動の緩和措置がほとんど取られず、排出量が現在のペースで増加し続け、世界の平均気温が産業革命前と比較して今世紀末までに4℃以上上昇する前提です。

RCP 4.5(2℃シナリオ)

強力な気候変動の緩和措置が取られ、世界の平均気温が産業革命前と比較して今世紀末までに約2℃程度上昇する前提です。

移行リスク

IEAによって提供されている以下2つのシナリオです。

2050年CO2排出量実質ゼロ(NZE)(1.5℃シナリオ)

世界のエネルギー部門のCO2排出量が2050年までに実質ゼロに達すると同時に、エネルギーへの普遍的なアクセスや大気汚染の改善など、他の持続可能な開発目標も考慮されています。このシナリオでは、2100年までに地球の気温は産業革命前と比較して1.5℃しか上昇しない前提です。

STEPS(現行の温暖化対策に大きな変化が起きないと想定した2.8℃シナリオ)

BAUシナリオでは、現況の対策から大きな変化がない前提のシナリオで、日本政府が表明している政策からの強化や弱体化は無い前提で評価しております。

(2)評価の時間軸:

2030年(中期)および2050年(長期)を用いております。

物理的リスクの影響は、中期よりも長期でより顕著となることが予想されます。一方で移行リスク・機会は中期よりも長期の見通しの不確実性が高くなります。

リスク管理

当社は、当社事業に影響を与える可能性のある物理的および移行リスク・機会を網羅的に洗い出し、社内関係者の知見に基づき、過去に実際に事業に影響を与えたもの、および今後影響を与える可能性が高いと思われるリスク・機会を抽出しました。

抽出された各リスク・機会を、2030年と2050年の時間軸に基づき、「戦略」セクションで記載の前提条件を参照して、各リスク・機会の潜在的変化の程度を定性的に評価しました。評価結果は、気候変動が当社事業に及ぼす潜在的な影響を洗い出し、リスク低減・機会活用の方法を検討するための基礎情報として今後活用します。

指標と目標

TCFD提言に従い、下記通り当社のGHG排出量に関する指標と目標を設定しております。

1.スコープ1と2 GHG排出量

2021年度の当社のGHG排出量については、国際的に認められた企業の排出量算定基準であるGHGプロトコルに沿って今回初めてスコープ1と2 GHG排出量を算出いたしました。GHGプロトコルでは、排出量を「直接」排出と「間接」排出に分けており、前者は事業者が所有または管理する排出源から、後者は事業活動の結果として他の事業者から排出されたものを適用しております。各スコープの排出量は、使用されたエネルギー量にGHGプロトコルで規定された排出係数を乗じて算定しております。

スコープ 排出量(t CO2e)
(注1)
割合(%)
スコープ1 固定燃焼 1,769 3
冷媒の漏洩 8,317 15
輸送用燃料 318 1
スコープ2 マーケットベース(注2) 45,129 81
スコープ2 ロケーションベース(注3) 39,477 -
合計(注4) 55,534 100

(注)

  1. 四捨五入の関係上、記載されている数値の合計と一致しない場合があります。
  2. マーケットベースは、企業が電力事業者より購入している契約内容を反映して算定しております。
  3. ロケーションベースは、平均的な発電排出係数(グリッド平均排出係数)に基づいて算定しております。
  4. 合計は、スコープ1と2(マーケットベース)GHG排出量を合算して算定しております。

2.気候関連の目標

当社は、パリ協定が目指す1.5℃目標に合わせ、スコープ1と2 GHG排出量の短期削減目標を設定致しました。最新の気候科学に基づき、2021年度を基準に2030年度までにスコープ1と2 GHG排出量を46.2%削減することを目標としています。

3.気候関連の指標

当社では、GHG排出量削減を進めるに際し、その進捗管理のための気候関連の指標を検討しています。今まで当社が取り組んできた環境・サステナビリティ関連の活動は、ペットボトル、缶、食品トレー、牛乳パックなどのリサイクルです。リサイクルは、持続可能な社会に向けて当社のお客様との関係を維持する為に重要な取組領域であり、以下のグラフに示すように回収率は年々向上しております。また、レジ袋削減のために再利用可能な袋やかごの持参を推奨しています。2009年より、使い捨てレジ袋の無料配布を廃止し、50%植物由来のバイオマスポリエチレン袋(1袋6円で販売)に切り替えております。

加えて、商品運搬時に流通容器として使用されている発泡スチロール箱を当社内で再資源化加工処理をしており、断熱材として再利用されております。他にも、当社内で発生する廃油、肉脂、魚の残渣(骨等)、段ボールを回収しており、廃油や肉脂は、主に石鹸等の油脂製品として、魚の残渣は肥料飼料として、それぞれ再利用されています。

リサイクル資源回収量の推移

県別マイバッグ・マイバスケット持参率(2023年度)

県別マイバッグ・マイバスケット持参率(2023年度)